全国銀行協会は、年金記録漏れ問題への対応として、会員各銀行の顧客からの要請があれば、年金保険料の口座引き落とし記録の照会に協力する方針を示した。ただ、証明書の発行を無料とするかどうかは各行の判断に任せるとしている。みずほ、三井住友、三菱東京UFJ、りそななどでは、すでに無料発行を実施している。
政府は、年金記録漏れ問題に関する新対策を発表した(内容は以下の通り)。また、「年金時効撤廃特例法」の施行日を7月6日とし、同日から社会保険事務所等で時効分の年金の支払手続を開始すると発表した。
・該当者不明の年金記録の照合・通知を2008年3月までに完了
・2011年度をめどに年金・医療情報を管理する「社会保障カード」を導入
・7月中に総務省の新組織「年金業務・社会保険庁監理委員会」を設置
年金支給の是非を判断する「年金記録確認中央第三者委員会」は、領収書がない場合の支給の判断基準について、「明らかに不合理でない」「一応確からしい」と判断できるものについては広く支給を認めていく方針を示した。個人の日記や手帳、預金通帳、家計簿、会社勤めの場合は、当時の雇用主の証言があれば認められる。ただし、本人の主張だけで証拠資料がない場合は認められない。
政府は、年金の支給可否等の判断を行う「社会保険審査会」と年金記録漏れ問題を受けて新たに設置された「年金記録確認第三者委員会」について、同時に同じ案件を審査しないことを決定した。同時に審査して異なる結論が出た場合の混乱を防ぐための措置。
【社会保険庁改革関連法の内容】
1.2010年に社会保険庁を廃止して日本年金機構(非公務員型の公法人)へ業務移行、
2.保険料徴収業務などを可能な限り外部委託、
3.悪質な保険料滞納者についての強制徴収を国税庁へ委任、
4.クレジットカードによる保険料納付など収納対策を強化
【年金時効撤廃特例法の内容】
1.年金記録が訂正された場合は5年の時効を適用せず過去の不足分を全額補償、
2.政府は年金情報について正確な内容とするよう万全の措置
日本経団連と日本商工会議所は、年金記録漏れ問題解決のため、加盟企業が従業員に代わって社会保険庁への年金相談や記録確認を行う仕組みを整備することを決めた。企業内に専用窓口を設け、従業員の同意を得たうえで年金の記録確認を行い、問題がある場合は「第三者委員会」への審査要請も行う。政府も専用部署を設置するなどして対応する考え。
政府は、給与から厚生年金保険料が天引きされているにもかかわらず勤務先企業の事務処理ミスや社会保険庁の記録ミスなどにより同庁に納付記録がない人について、天引きを示す給与明細等があれば年金の支給を広く認める方向で検討に入った。企業が組織的に未納だった場合については慎重に議論を進めていく考え。
柳沢厚生労働大臣は、すべての公的年金加入者・受給者約1億人に対して、来年度にも年金の加入履歴を送付する方針を明らかにした。加入者(約7,000万人)には、特定の年齢層のみを対象としていた「ねんきん定期便」を送付し、受給者(約3,000万人)には、該当者不明の年金記録約5,000万件との照合の結果とともに加入履歴を送付する。
社会保険庁は、社会保険事務所がない全国の市町村1,500のすべてにおいて、年金に関する出張相談を行うと発表した。市町村の庁舎や商工会議所などに臨時の窓口を設け、社会保険事務所の職員らが巡回するもので、7月末までに実施するとしている。
企業年金研究会(厚生労働省年金局長の諮問機関)は、確定拠出年金について、現行では認められていない従業員本人による掛金の拠出を、労使の合意を条件に認めていく方針を示した。今年中に税制上の優遇措置についてもまとめ、法案化を目指すとしている。
領収書がない場合などに年金支給の是非を判定する「年金記録確認中央第三者委員会」(社会保険労務士や弁護士らで構成)の初会合が開かれ、7月中にも全国各地に「確認委員会」を設置し、年金記録に関する異議申立ての受付を開始する方針を固めた。判定基準については7月中旬までに作成するとしている。
厚生労働省は、2005年度における公的年金の財政状況を社会保障審議会(厚生労働大臣の諮問機関)に報告し、厚生年金の黒字額が時価ベースで8兆3,267億円(前年度比259.4%増)となったことが分かった。株価の回復により運用収入が大幅に増加したことによるもの。
政府・与党は、記録漏れとなっている厚生年金の加入記録の特定方法として、雇用保険の加入記録を活用する方針を固めた。従業員本人の申出に基づいて雇用保険の加入記録を確認するもので、7月中旬に「年金記録確認中央第三者委員会」が策定する記録確認のガイドライン(運用指針)にも盛り込まれる。
内閣府は、国民生活センターに寄せられた年金に関する苦情相談が1997年からの10年間で2,439件あり、そのうち記録漏れを指摘する相談が約50件あったことを明らかにした。2002年までは約100件程度だったが、2003年に327件になり、2006年は過去最高の577件の相談が寄せられていた。
社会保険庁は、公的年金の記録漏れ解消のため、コンピュータシステム上にある年金記録2億7,000万件のすべてを再調査する方針を示した。システム上で氏名などの入力ミスが見つかった場合は記録を訂正、さらに手書き台帳を写したマイクロフィルムの内容を新規に電子データ化し、既存のシステム上の全記録と照合するもの。